医学博士・久保明先生に聞く
医学博士・久保明先生プロフィール
くぼあきら・医学博士
医療法人財団百葉の会銀座医院院長補佐・抗加齢センター長、常葉大学健康科学部教授、東海大学医学部医
学科客員教授、厚生労働省薬事・食品衛生審議会専門委員、新潟薬科大学客員教授、内分泌・糖尿専門医、日本抗加齢医学会評議員、日本総合健診学会審議員、日本臨床栄養協会理事
慶應義塾大学医学部卒業後米国に留学。帰国後は一貫して予防医学とアンチエイジング医学に取り組む。「医療法人財団百葉の会銀座医院」など都内数カ所で診療を行うほか、講演や起業のアドバイザーとしても活躍。加齢による老化や、生活習慣病に関する著作も多数。
予防医学の抗加齢医学の分野で大きく注目医療の現場でも活用されるアロマセラピー
エイジングを数値化
心と身体の現状を把握することで予防につながる対策ができる
-抗加齢医学の第一人者である、医学博士・久保明先生は、アロマの効果を数値化し、検証を行う「メディカルアロマ アンチエイジング研究所」のパートナーでもあります。
久保先生が医療の現場でアロマの可能性について、注目したのはいつ頃からでしょうか?
【久保先生】1996年に自身のクリニックを開設した時、運動療法、栄養とともに、ストレスマネジメントを不可欠のものと考え、抗加齢対策の取り組みの一環としてアロマセラピーを取り入れました。
アロマの有効性を臨床の現場でどう使えるかを考えました。数値化し検証することがサイエンスですから、まずはホルモンや血液や内臓脂肪、自律神経、ストレスチェックといった検査など、様々な方向から「エイジング」を評価。
そのエイジングに対する有効な手段のひとつとして、アロマセラピーがあると考えています。
数値が語るアロマの可能性
老化に関係するホルモン分泌や内臓脂肪、自律神経のバランスに変化
アロマは「リラックスする」「心地よい」など「気分」で語られがちですが、先生は実際に有効性があることを、多彩な検査によってデータを集め、科学的な検証を続けていらっしゃるのですよね。
【久保先生】エイジングに大きく関係するホルモンに「DHEA―s」というものがあります。体内の副腎皮質から分泌されますが、加齢とともに減少。動脈硬化や骨の問題にも大きく関わります。
このホルモンがアロマセラピーでどう変わるのか? 実際にアロマセラピーのトリートメントやホームケアを行った後に検査すると、分泌量が上がる人もいます。
他にも、内臓脂肪や自律神経のバランスなどにどう影響を与えるのかなどデータを集め、可能性を感じています。アロマセラピーの専門家と組むことで、医学とアロマセラピーのちょうど真ん中の部分を探っている
ところですね。
ただ、サイエンスはネガティブなデータを重視しなきゃいけない。アロマセラピーで数値が上がらないという例もあります。大きな可能性はあるけれど、「万能」であるかのように広まってはほしくないですね。
検査によって数値が明確になることで、セラピストのアプローチの仕方も変わりますよね。身体や心の悩みには、自覚症状がないために本人が気が付かない部分や、思い込みがあります。
セラピストはお客さまと対話し、肌に触れることでしかコミュニケーションできません。
「このお客さまにはこのアロマを選んで、力加減もこのくらいに……」ということは、セラピストの主観や経験から導き出すことしかできませんでしたが、検査の数値がアロマ選びやトリートメント方法のひとつの目安となり、思い込んでいたり、見過ごしたりしている不調にも働きかけることができるのではと思っています。
【久保先生】診断、治療する上では、自覚症状も大切だけれども、身体に対して思い込んでいる部分はたくさんありますね。そして医師が知らないことや解明されていないことも多い。
だからこそ、分野が違うプロが協力し合い、データを集めて検証を重ねることで、新しい可能性がひらけていくと思います。
医療や介護の現場でのアロマ
治療をサポートするだけではなく、働く人もアロマがサポート
日本は今や「超高齢社会」。医療や介護の現場で働く人たちにとっても、アロマが助けになればと思っています。
例えば「におい」の問題。アロマによって気になるにおいをマスキングしたり、また働く方たちの疲れやストレス緩和にも役立てられるものと考えています。
【久保先生】そうですね。科学的な目だけでみるとそういう「におい」に対して、「消臭スプレーをまけばいい」ってなっちゃう(笑)。
でも、それでは患者さんは「くさいから消臭スプレーをまかれた」と思ってしまうよね。そこが科学的なアプローチの弱い部分です。
アロマに限らず、専門家と連携し、異なるアプローチを取り入れることで、YESかNOか、どちらが正しいかということではなく、真ん中を大切にしていきたいと思っています。
アロマを勉強している人へ
プロを目標にして、最低限の医学的知識を身に付けてほしい
今勉強している人たちの中で、今後、医療の現場でアロマを取り入れた活動を行う人も増えてくると思います。その方たちへ何かアドバイスをいただけますか?
【久保先生】一つは、やる以上はプロになってほしい。その知識をきちんと使い、そして教えられるくらいに。
そしてもう一つは、身体のことや老化のメカニズムなど、最低限の医学的なことを学んでほしいです。
セラピストをしていると、10年なんてあっという間。お客さまとのお付き合いも、長くなります。10
年、20年と経てばお客さまの身体もお悩みも変化。その変化に合わせてトリートメントも変えていく必要があります。
その時に医学的な知識があることは、とても大事だと思います。
※このページの情報(年齢、所属、役職等)は2015年12月当時のものになります。