水蒸気蒸留法
現在使われている水蒸気蒸留法の形は、錬金術師のアヴィケンナにより、10世紀に開発されました。
原型は5000年前のメソポタミア文明にまで遡り、ローマ時代にもよく利用された方法です。現在は装置も大型で複雑になっていますが、基本原理は変わっていません。
まず、精油の原料になる植物を蒸し器のような釜に入れて、釜の下で火を焚き、蒸気を発生させ過熱します。すると、熱と圧力により芳香成分が含まれる細胞壁が壊され、芳香成分が蒸気の中に放出されます。この蒸気をパイプに集め、パイプを冷却すると中の水蒸気は液体になります。
この液体を集めておくと、精油は水より軽いので上部に浮き、下部に抽出に用いた植物の芳香蒸留水ができます。(例えば、ラベンダーを蒸留した場合は、この芳香蒸留水がラベンダー水になります。)
ローズなどでは、この芳香蒸留水の中にも芳香成分が溶けているので、新しい花びらを入れて再度蒸留することもあります。
精油により、蒸気の圧力・温度・所要時間が異なります。精油によって抽出時間はほぼ決まっていますが、うまく蒸留するには、長年の経験も必要のようです。
植物を短時間に高圧・高温で蒸留すると、量は多くとれますが、品質に影響を及ぼします。その植物に合わせて、じっくり時間をかけて蒸留することで、良質の精油を得ることができるのです。